ポストIDFAにおいてユーザー獲得マネージャーがより重要になる理由
Tiahn Wetzler, Director, Content & Insights, Adjust, 2022年6月09日.
iOS 14.5のリリースに先駆けて、ユーザー獲得 (UA) マネージャーの必要性が疑問視されるようになりました。広告の購入やパフォーマンスの評価が高いレベルで効率化される中、UAマネージャーはどのように価値を提供し続ければよいのでしょうか。
iOS 14の登場後は、モバイル広告業界はそれがもたらす激変と格闘し続けています。この変化を受けて、UAマネージャーは、iOSの複雑な新しいモバイル広告エコシステムをナビゲートするという、マーケティングチームにとって不可欠な役割を取り戻しています。計測の方法は進化し続けているものの、キャンペーンで常に効果的にユーザーをアプリに誘導するというマーケターの役割は今後も変わりません。UAは確定的データを取得するだけでなく、予測顧客生涯価値(pLTV)のアルゴリズムとロジックを改善するためにも必要であるため、オプトイン率を最大限高めるための最適化が戦略の基礎となります。このように、優れた技術スキルを持ち、対応力の高い戦略的なUAマネージャーは、あらゆるアプリマーケティング企業にとって無くてはならない存在なのです。
UAの推測作業の必要性が復活
iOS 14.5からAppleが行っているプライバシー関連の変更により、アトリビューションとUAの性質が変わりました。UAマーケターは、iOSユーザーがAppTracking Transparency (ATT) フレームワークの許諾画面でIDFAを共有しないことを選んだ場合、ユーザーレベルのデータが失われるという問題に直面しています。こういったユーザーがキャンペーンにどう反応したかがわかりにくくなり、チャネルごとの正確なROIやROASを確認できなくなるのです。また、これまで自動化が進んでいたUAワークフローが大きく損なわれることにもなります。
その一方、ユーザーがATTにオプトインした場合、広告主はIDFAを使い続けることができるため、これまでと同じようにUAマーケティングを行うことが可能です。iOSで競争力を高めるには、ユーザーのオプトインをできる限り増やすことが重要です。また、多くのマーケットで主流であるAndroidユーザーへのUAマーケティングも、(今のところは) 同じように実施できます。iOS 14.5のリリースからiOS 16の発表にかけて同意率は一貫して上昇し、2022年5月にはグローバル平均26%を達成しています。オプトインしてターゲティング広告を閲覧することのメリットをユーザーに効果的に伝えられていることが、このデータから見てとれます。オプトイン率が高い場合、SKAdNetworkのconversion value戦略を構築することで、同意ユーザーの膨大なデータを取得できます。アクセスできるデータが多いほど、その後のユーザージャーニーにおける高いLTVを示す最初の24時間の行動や、イベントに関する戦略的なインサイトを得られる可能性が高まります。これは強力なconversion value戦略だけでなく、予測顧客生涯価値(pLTV)を計測するための基盤となります。
見直されるUAマネージャーの役割
モバイル業界は、ユーザーのプライバシーを保護しデータアクセスを制御する方向に進んでいます。データの複雑さと曖昧さが増したことで、個々のUAマネージャー (またはUAチーム全体) のスキル、創造性、知識がこれまで以上に重要になりました。以下に、ユーザープライバシーへの注目が高まるモバイル業界のUAチームにとっての新たな課題と機会をご紹介します。
SKAdNetworkと集計データ
iOSユーザーがIDFAの共有に同意しなかった場合、Appleが認める方法でインストールのアトリビューションデータを得る唯一の手段はSKAdNetworkです。これにより、UAチームの仕事が複雑化します。
第一に、UAマネージャーは、遅れて送信される集計済みのSKAdNetworkデータポイントを残りのデータやBIスタックとどのように接続できるかを理解し、ソース間のデータの不一致を手動で解消して、IDFAを使用するすべてのプロセスをやり直す必要があります。多くの場合、ユーザーのセグメンテーションや行動モデリングといった主要なタスクには大きな困難が伴います。この変更による影響は組織のレベルによって大きく異なるため、影響自体を明確にすることが重要です。
第二に、SKAdNetworkを最大限に使用して変更に対応することが、UAのパフォーマンスにとっての鍵になります。UAチームは、インストール後のアトリビューションペイロードのconversion valueスキーマを最適化するために、SKAdNetworkを細かく理解する必要があります。これにより、最初の24時間以内のアプリの使用状況についての多くのインサイトを獲得でき、使用パターンの学習や推定につながるデータフローも入手できます。
また、UAチームは、iOS 15でのSKAdNetworkによるポストバック動作の変更など、Appleが行うSKAdNetworkの変更にも対応しなければなりません。SKAdNetworkの意味を理解して、機能の利用を最適化し変更に対応することは、それ自体が新しい分野であり、対応力と批判的思考を備えた専門知識が必要です。
Adjustは、市場におけるプライバシー優先の考え方を反映した次世代ソリューションの提供にコミットしています。つまり、個別のデータポイントを基にする計測を離れ、集計データに基づいてインサイトを最適化するソリューションへと移行するものです。
さまざまな戦略を活用
IDFAのない世界から生じるもう1つの結果として、他のマーケティングチャネルが再び注目を集めることになります。UAの成功にとって、広告を購入してそのパフォーマンスを計測することが欠かせない点は変わりません。しかし、マーケティングチームは、これまで以上に利用できるあらゆるチャネルを駆使し、新しいユーザーを引き付けて既存のユーザーを維持する必要があります。それには、UAマネージャーやクリエイティブ、その他のマーケターが緊密に連携し、これまでデータ主導ではなかった戦略を策定して最適化することが大切です。例えば、以下のような内容です。
- 自然検索でアプリ見つけてもらう方法としてApp Clipを使用し、それを使ったユーザーにアカウント作成を勧めます。(App Clipとは、自転車のレンタル、駐車場の支払い、食事の注文などのタスクをすばやく行える小型のアプリです。App Clipには、Safari、マップ、メッセージからアクセスできるほか、現実の世界からNFCタグ、QRコード、App Clipコードを通して使用することもできます。App Clipコードは、特定のApp Clipを開くための一意のマーカーです)
- プッシュ通知でターゲットを絞ってパーソナライズされたメッセージを送ったり、アプリ内メッセージを活用したりすることで、アクティブユーザーへのアプローチや維持を実現します。
- コミュニケーションを目的としたメールや、アプリのインストールやアカウント作成を行なったユーザーのリターゲティングを目的としたメールによるマーケティングを統合します。
- アフィリエイトや招待プログラム、無料トライアルやデモを活用して、新しいユーザーを引き付けます。
- ポートフォリオに複数のアプリがある開発者にとってのクロス・プロモーションの可能性を追求します。
クリエイティブテストと最適化
UAマネージャーの未来は、メディアの購入からクリエイティブのテストや最適化まで、量的な厳密さを適用することにあるという考え方もあります。当然ながら、UAとクリエイティブの連携は始まっており、iOSの変更によってその重要性は増しています。iOS 15では、プロダクトページ最適化(PPO)とカスタムプロダクトページという、UAマーケターにとって重要な2つの新機能が導入されました。これにより、マーケターはさまざまなApp Storeのプロダクトページやクリエイティブを試したり、有料広告キャンペーンの特定のオーディエンスとリンクした独自のプロダクトページを作ったりできるようになりました。
ターゲットオーディエンスを理解
多くのマーケターは、メディアミックスを再考し、ユーザーを見つけて引き付ける新たなチャネルを探しています。例えば、関連パブリッシャーと連携したコンテクスチュアル広告や、インフルエンサーによるマーケティングを通して、ソーシャルやUGCプラットフォームのオーディエンスにアピールすることなどがそれに当たります。この種のチャネル管理は、これまでのマーケティング機能の中核です。しかし、これにはモバイルのパフォーマンスマーケティングで行われなくなってきていた推測作業が求められます。
これらのチャネルでパフォーマンスの高いキャンペーンを実施するには、ターゲットユーザーが時間を費やしているプラットフォームやコミュニティ、あるいは、よく使用している他のアプリなどについて把握しておく必要があります。その上で、それぞれの文脈でオーディエンスに共感してもらえるクリエイティブを制作します。
成功を収めるのは、見込み顧客の習慣や価値を深く理解しているUAマーケターです。インストール後の顧客ロイヤリティを促し、ユーザー体験のパーソナライズに役立つゼロパーティデータを収集して高いユーザー維持率につなげるには、このようなオーディエンスとのつながりも不可欠です。
モバイル広告エコシステムは急速に進化を続けています。その中で、変化するリアリティに適応して拡大できるUAマネージャーは、今後もユーザーの成長に重要な貢献を続けることになるでしょう。その仕事は難しくなる可能性もありますが、計測と最適化がアプリのマーケティングを成功に導く鍵であることに変わりはありません。
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