ガイド
iOS 14.5以降のマーケティング:はじまりから現在までを振り返る
はじめに
2020年6月の世界開発者会議(WWDC)でAppleが初めてiOS 14のリリースを発表してから2年が過ぎ、2020年9月16日の公開からも1年以上が経過しました。最初の発表から2021年4月のiOS 14.5のリリースにかけて、モバイルマーケティング業界は大きく変化し、ユーザープライバシーの取り扱いとモバイル広告エコシステムそのものへのアプローチの見直しが求められました。
Adjustはこうした変革の最前線に立ち、Appleやパートナー、クライアントと緊密に連携して、ポストIDFA時代への可能な限りシームレスな移行のために取り組むとともに、マーケター、開発者、広告主それぞれのニーズに応えるガイドラインやソリューションを提供してきました。モバイル計測パートナー(MMP)は、依然としてモバイルマーケターにとって欠かせない存在であり、「計測」の定義とMMPがもたらす価値は次第に変化しました。今やアトリビューションや確定的データに限らず、集計データをより幅広く、まとまった形で分析することにも重点が置かれています。
2022年10月のSKAdNetwork 4.0(SKAN 4)とiOS 16の正式リリースに伴い、業界にさらなる変化がもたらされました。SKANの仕組みは大きく変化し、iOSでのモバイルマーケティングと計測について業界アプローチの見直しが求められました。これは、多くの企業が最近になってようやく気付いたことです。Adjustはアップデートや変更に対応するためのテストとソリューション開発を続けており、すでにSKAN 4対応のSDKをリリースしています。iOSと同様に、Adjustは、市場におけるプライバシー優先の考え方を反映した次世代ソリューションの提供に継続的にコミットしています。つまり、個別のデータポイントを基にする計測を離れ、集計データのインサイトを最適化するソリューションへと移行するものです。この取り組みの一環として、Adjustは2022年に、スマートかつ簡単で効果的なconversion valueマッピングのためのオールインワンソリューションであるConversion Hubをローンチしました。
iOS 14.5以降のマーケティングでは、SKANやAppTrackingTransparency(ATT)、オプトインの確保からconversion value設定の構築・マッピング、Conversion Hubの活用、ポストIDFAで優れたパフォーマンスを発揮するマーケティング戦略の策定など、把握しておきたいトピックが数多くあります。
業界のプライバシー優先モデルへの移行はますます進行しており、Adjustはこうした変化に対応してユーザーのプライバシーとデータ保護に取り組んでいます。このガイドでは、iOS 14.5+からiOS 16.1にかけての変更点と業界への影響、さらにAdjustがお客様に価値をもたらすためにどのように対応しているかに焦点を当てます。また、SKANについて詳細に解説するとともに、総合的な分析を通してマーケターが知っておくべきポイントのすべてをお届けします。
パート 1
iOS 14の初回リリース:業界を揺るがした変更点とは
iOS 14.5がリリースされるまで、Appleはそれぞれのデバイスにリセット可能な一意の識別子を付与することで、デバイスにダウンロードされているすべてのアプリがその識別子にアクセスできるようにしていました。広告計測を制限するオプションはAppleデバイスの設定画面にありましたが、ほとんどのユーザーはそれについて知らなかったか、あるいは気にしていませんでした。広告識別子(IDFA)と呼ばれるこのIDを使用することで、マーケターはクリック数を計測してインストール数と比較することができ、モバイル計測パートナー(MMP)はこれらをアトリビュートすることが可能でした。ユニークデバイスID(UDID)から始まったIDの使用は2008年より行われ、2012年にIDFAに切り替わりました。
それからというもの、モバイルエコシステムは成長と進化を続けています。以前と違うのは、広告によるトラッキングについてユーザーが知識を持つようになったことです。データプライバシーをはじめ、データがどのようにアクセスされ管理されているかに関する懸念は、今後も引き続きユーザー(および立法者)にとっての大きなテーマです。それを受けて登場したEU一般データ保護規則(GDPR)やカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)のような規制では、該当管轄区におけるデータプライバシーを尊重したデータ処理方法が定められています。
こうした変化を伴いながらアプリ業界が成長を続ける中、アプリがIDFAにアクセスするにはポップアップを表示してユーザーの同意を得る必要があるという「WWDC 2020」でのアップルの発表を受けたモバイルマーケティング業界の反応は、非常に厳しいものでした。この影響の重大さは当初予測されていたほど壊滅的ではありませんでしたが、ユーザープライバシーはすでに業界の第一優先項目として扱われていたものの、アトリビューションと計測に対する私たちのアプローチが本質的に変わったと言えるでしょう。
ATTは2020年に発表されたものの、実際に施行されたのは2021年4月のiOS14.5リリースにおいてでした。
この変更により、アプリやアプリマーケターにとってのアトリビューションのあり方が大きく影響を受け、今までのユーザー獲得の計測方法が今までと同じようには通用しなくなりました。結果として、現在iOSで使用できるアトリビューションと広告計測メソッドは、ユーザーの同意を得てIDFAにアクセスするATT frameworkとSKAN(iOS 14.5のSKAN 2.2以降のもの)の2つのみとなったのです。ユーザーから同意が得られた場合、これらのユーザーはiOS 14.5リリース前と同じ方法で計測・アトリビュートされます。しかし、ユーザーが同意しない場合はSKANの使用が不可欠となり、ユーザー情報の収集・処理に対するまったく新しい考え方とアプローチが必要になります。
パート 2
新たなプライバシーポリシーがマーケターと業界全体に与える影響
業界全体で見ると、これらの変更点は、ユーザープライバシー優先のエコシステムへと移行するプロセスの一環であることがわかります。Appleは、「プライバシーは基本的人権であり、同社の製品はこの理念を念頭に置いて設計されている」と述べています。Adjustはこのフレームワークを全力で支持し、Apple、クライアント、パートナー、業界全体と連携してユーザープライバシーを守るための取り組みを行うとともに、ユーザーの自身のデータに関する決定権を尊重しています。
しかし、プライバシー優先のポリシーは、ユーザー獲得(UA)やアトリビューション、そしてキャンペーンパフォーマンスに関するデータの精度や正確さが低下する可能性を意味します。これは、広告主がユーザーレベルのデータやキャンペーン指標についての詳細な情報を得ることが難しくなるためです。IDFAを使用したユーザー獲得では、マーケターは正確なキャンペーンデータに基づいて成果を可視化することで、予算を投入するチャネルやパフォーマンスの最適化に関する意思決定を行います。通常使用されるKPIは、0日目/1日目の継続率、ユーザーのLTV、ROI、ROASなど、特定の指標です。この方法を採用しているマーケターの多くは、非常に少ない予算でキャンペーンを運用しています。規模の拡大といっても、わずか数パーセンテージポイント止まりとなることもあります。SKAN 4以前は上記のKPIがサポートされていなかったため、このレベルのインサイトは得られませんでした。そのため、モバイルアプリのパフォーマンスマーケティングにおいて、以前は焦点を当てるべきチャネルを把握することが比較的簡単だったにも関わらず、現在はそれが複雑になりました。ポストIDFA時代において、戦略的思考のUAマネージャーがより重要視される理由とも言えます。ユーザー獲得は、これまで常にモバイルマーケティングの中核を成す柱でしたが、ユーザープライバシー重視の改革により、マーケティングの方法を一から再検討し、俊敏性と柔軟性を維持することがこれまで以上に重要になります。パーセンテージポイントを向上させる手段として、自動化のみに頼ることはできなくなったのです。
高いオプトイン率を獲得していれば、キャンペーンごとのKPIをしっかりと把握し、慣れ親しんだツールや手法をすべて活用できるため、より効率的に最適化できます。また、オプトイン率が高いほど、同意していないユーザーのデータを包括的に理解し、戦略構築に活用するのにより多くのデータが必要になります。これに関しては、オプトインの意義を理解してくれているユーザーが増え、同意率が一貫して上昇しているという前向き傾向が見られています。
SKAN 2で計測するその他のインベントリは、計測・管理がより複雑です。では、これがアプリ内広告やアプリ内購入、サブスクリプションという最も一般的な収益化モデル3つにどのような影響を与えるかを見ていきましょう。
-
アプリ内広告
アプリ内広告で主に使用されるのは、コンテクスチュアル広告とターゲティング広告の2つです。コンテクスチュアル広告(非ターゲティング広告)は、対象ユーザーがそこまで絞られていない一方で、ターゲティング広告は、IDFAに基づいて特定のユーザーに表示されます。広告費用がより高額になるもののコンバージョン率が高く、一般的により人気の高い広告タイプです。iOS 14.5以降、ユーザーがオプトインしていない場合はIDFAが取得できないため、ターゲティング広告は表示できません。「トラッキング要求を拒否(オプトアウト)した後、以前より多くの広告が表示されるようになった」と答えるユーザーがいるのはこのためです。ターゲティング広告を配信できないことによる収益の減少分を補うために、多くのパブリッシャーは、よりたくさんの広告を表示しています。
-
アプリ内購入とサブスクリプション
ゲームアプリでのゴールドやコインの購入をはじめ、ヘルス&フィットネスアプリや仕事効率化アプリでプレミアム機能を利用したり、サブスクリプションに登録するなど、ユーザーはさまざまなアプリで製品やサービスに課金しています。ここでは、iOS 14.5以降の変更点は収益に直接影響しないものの、オプトアウトしたユーザーのアトリビューションができないことにより、広告主はキャンペーンの成果を計測したり、LTVとパフォーマンスの高いユーザーの流入元を把握したりすることが難しくなります。
過去2年半にわたり、iOSの広告市場は継続的に成長し続けており、この先もその勢いが衰えることはないでしょう。マーケティングを取り巻く状況が変わっても、獲得できるユーザーは常に存在します。これが、AdjustがATTとSKANをサポートし、キャンペーンの最適化と、アクションにつながる指標を重視したソリューションを提供している理由です。Adjustは、クライアントが引き続き成長に向けた取り組みに集中できるようサポートしていきます。
プライバシーとデータ保護は、モバイル広告業界にとって重要な概念です。Adjustは広告主に対し、ATT frameworkとSKANの集計データを組み合わせて、同意に基づいたユーザーレベルのデータを可能な限り多く取得し、ユーザー獲得、アトリビューション、計測に対する包括的なアプローチをとることをおすすめします。
パート 3
AppTrackingTransparency、ユーザー同意、オプトイン
前述したとおり、iOS 14.5以降のアトリビューション計測とキャンペーン計測において悩みの種となるのが、IDFAを取得できない点です。AppleのATT(App Tracking Transparency)は、ユーザーがトラッキングに同意(オプトイン)した場合に、アドターゲティングと計測を可能にするフレームワークです。より多くのユーザーが同意すればするほど、効率的に計測できる、粒度の細かいデータのプールが大きくなります。さらに、同意したユーザーにはターゲティング広告が表示され、そのデータをconversion value、予測アナリティクス、SKANキャンペーンの戦略の継続的改善に活かすことができます。
ポストiOS 14で正確なデータを取得するには、強力なオプトイン戦略が必要です。ユーザーの同意を得ることだけに優先的に取り組んでも上手くいくとは限りませんが、これが重要なのは確かです。オプトイン率が高いと、アトリビューションが受ける影響を最小限に抑えることができるほか、競争優位性を確保できます。同意するユーザーが多いほど良いのはもちろん、オプトイン率やオプトインユーザーの割合が比較的低い場合でも成功への手がかりへとなり得ます。
ユーザーのATTオプトイン率が高くなればなるほど、マーケターはより多くの確定的データを受け取ることができます。これらのデータポイントは、同意したユーザー、同意しなかったユーザー、そして集計データに対する広範にわたる戦略を構築するのに活用可能なほか、pLTV施策にも役立ちます。機械学習アルゴリズムのロジック改良は、SKAdNetworkと同意ユーザーの集計データから成長機会を予測するのに役立つpLTV(予測顧客生涯価値)などの予測指標KPIを使用したいと考えているチームにとって肝心な要素です。また、受け取る確定的データの量が多ければ多いほど、pLTVのスコアは優れたものになります。
オプトイン率の向上と同意フローの構築、さらに全体的なUX戦略の一環として効果的なオプトインを設計するにあたり、重要なポイントがいくつかあります。以下に、ATTポップアップへのユーザーのレスポンスに大きな影響を与える変数を紹介します。
- タイミング: はじめに特定かつ定義する必要があるのは、オプトインリクエストを表示する具体的なタイミングです。通常は、オンボーディングフローの中でプロンプトを表示するのが最も効果的だということがわかっています。
- ボタンの配置: 行動喚起(CTA)ボタンの配置を変えるだけでも、ATT同意率の向上に効果があります。シンプルなテキストが書かれたボタンを横に並べましょう。「同意する」オプションを右側に配置すると最も効果的です。
また、全体的なオプトイン率はゆっくりと、しかし確実に上昇しています。iOS 14.5のリリース当初、世界平均は約24%だったものの、2022年第4四半期時点で28%にまで増加しました。
完全に最適化されたオプトイン戦略の構築に加えて、オプトインを含む全体的なUX戦略を定義し、繰り返しテストを行うことも重要です。いつ、どこで、どのように同意プロンプトを表示するかに関するUXアプローチを設計・実装しただけで終わりではありません。Adjustが、ABテストやランダム化比較試験などを行ってテストとトライアルを繰り返すことを重要視しているのはこのためです。
パート 4
iOS 14.5以降のマーケティングとSKAdNetwork
オプトインしないユーザーに対して、マーケターは、SDK機能とAPIコールを組み合わせたAppleのSKAdNetworkを、アプリのインストールや再インストールのアトリビューションを行うためのソリューションとして使用できます。Appleはプライバシーを重視した基本的なアトリビューションを提供することを目指しており、広告主はSKANを無料で使用できます。また、Appleのプライバシーガイドラインに則って設計されているため、ユーザーの同意は必要ありません。SKANからのアトリビューション情報は、デバイスからAppleへ、そしてアドネットワーク、開発者、Adjustをはじめとするモバイル計測パートナー(MMP)へと送られます。クライアントは社内でSKANを実装するか、あるいはAdjustでも実装のサポートをしています。Adjustと連携していてもアトリビューションを行うのはAppleであることにご注意ください。Adjustが行うのはデータの集計です。
SKAN 3まで、SKANは24時間のタイマーとともに下流の指標の6ビットで構成されたスペースを提供していました。これは0〜63の間の数字です(またはバイナリーの000000〜111111の間)。これは「conversion value」とも呼ばれ(SKAN 4では「粒度の細かいconversion value」となります)、バイナリーで表現可能なあらゆる値に割り当てることができるほか、どのイベントを含めるかはアプリが決定できます。Conversion valueがアプリ内で定義された6ビットのコードに更新されるたびに(SKAN 3まで)、タイマーがさらに24時間延長されます。このconversion value期間の有効期限が切れると、次のアトリビューションのための24時間がトリガーされます。この仕組みには、インストールの時間を分かりにくくすることで、イベントのトリガーを個別のユーザーに紐づけできないようにするという考え方があります。その後、データはSKAN 3によって集計された状態で共有されます。きめ細かいユーザーレベルのデータは含まれません。
もう少し簡単に言うと、conversion valueは0〜63の間の数字で、ビットロジックを使用して最大6つのイベントを計測するのに使用されます。それぞれのconversion valueは特定の条件に紐付けられており、レポートのための有意義なKPIが得られます。
このシステムを最大限活用するには、広告主とマーケターは最初の24時間を重要視する必要があります。あらゆるデータを活用してユーザー行動の全体像をはっきりさせることで、予測を立てたりセグメントを特定したりできます。重要なのはユーザーを獲得することだけでなく、最初の24時間のユーザー行動から、その後のユーザーの動きを把握することです。多くのアプリは、後段階のイベントの特定と予測に取り組むと同時に、イベントトラッキング戦略を全面的に見直す必要がありました。例えば、7日目のサブスクリプションイベントは、予測分析によってその可能性を計算することで、前段階イベントと関連付けることができます。
SKAdNetworkを使用したマーケティングが成功するかどうかは、conversion value戦略をどう構築するかに左右されます。次のパートでは、クライアントがconversion valueスキーム(イベントベースと値ベースの両方)を理解し、構築するためにAdjustがどのようなサポートを提供しているかを説明し、マーケターと開発者がアプリにとってより適切なソリューションを特定する方法を紹介します。
パート5
iOS 15のさらなる変更点
iOS 14からiOS 14.5の発表とATTのリリースは、iOSでのアトリビューションとポストインストールのイベント計測に大きな変化をもたらしました。2021年9月にリリースされたiOS 15は、iOS 14ほどの衝撃は業界に与えなかったとはいえ、さらなるユーザーのプライバシー強化を目指すAppleによって重要な変更点と新機能が導入されました。
リリース時点では、SKANで取得したポストバックのコピー(アプリインストールが発生する際のアトリビューションコール)はアドネットワークだけでなく、開発者も受け取ることができます。モバイルアプリ業界はこの変革を歓迎しました。インストールからインストール後までのデータにアクセスできるため、開発者がより透明性の高いデータを得られるとして好意的に受け止められました。
iOS 15のアップデートにおいて、モバイル広告主の視点から見て最も関心度の高い変更のひとつがプライベートリレーです。SafariでWebを閲覧するiOSユーザーのプライバシー保護を目的に設計されたプライベートリレーは、Appleのサーバーを介してすべてのネットワークトラフィックをリダイレクトし、ユーザーのIPアドレスを非表示にします。つまり、ユーザーを追跡してユーザープロフィールを作成することはできません。巷では、iOS 16以降、プライベートリレーはデフォルトでONになると噂されていました。仮にそうなった場合、すべてのSDKトラフィックがプライベートリレーを介してルーティングされるため、ユーザーとキャンペーンパフォーマンスに関するインサイトを得る仕組みがより複雑になりますが、現時点ではまだ変更はありません。また、SKAN 4リリースに伴い、AppleはSafariユーザー向けにWebからアプリへのアトリビューションの提供を開始しました。
また、iOS 15でリリースされた「メールプライバシー保護」機能では、Appleの「Mail」アプリユーザーはIPアドレスと位置情報を非表示にしたり、メール開封のトラッキングを匿名化したりできます。これらのオプションがONになっている場合、マーケターはメール開封などの情報にアクセスできなくなります。プライバシー関連のもう1つの新機能「メールを非公開」では、ユーザーはオンラインフォームの入力時に自動生成されるアドレスで、自分のメールアドレスを非表示にするかマスクすることができます。
さらに、UA戦略とキャンペーンパフォーマンスの向上を目的としたiOS 15の新機能には、カスタムプロダクトページとプロダクトページの最適化があります。マーケターと開発者はアプリストアでカスタムページを作成でき、最大35のユーザーセグメント向けにターゲティング・最適化したバージョンをテストし、その結果を関連するUAキャンペーンに紐付けることができます。
パート6
SKAN 4、iOS 16.1.1とその仕組み
2022年10月にリリースされたSKAN 4は、2023年を通してiOSの計測・アトリビューションに大きな影響を与える新機能とオプションを多数導入しています。これらのアップデートは、アドネットワークやアプリ開発者にとって大きなチャンスとなる一方で、新たな複雑さを伴うことから、conversion valueやSKANキャンペーンに関する戦略や設定を見直さなくてはなりません。
以下にSKAN 4の主な新機能をまとめました。
-
ポストバックが1つから3つに: これはモバイルマーケターにとって非常にありがたいアップデートです。今までは24時間の計測期間だけでしたが、これからは3つの計測期間を設定できるようになります。ポストバック1はインストール後0~2日目、ポストバック2は3~7日目、ポストバック3は8~35日目をカバーし、いずれも24~144時間のポストバックタイマーを設定可能です。
-
Conversion valueの粒度設定: Conversion valueを粒度が細かい値(SKAN 3でおなじみの0~63の値)と粗い値に設定できるようになり、後者を低・中・高に割り当てるオプションが追加されました。粒度の細かいconversion valueはポストバック1でのみ受け取れる一方で、粒度の粗いconversion valueはどのポストバックでも受け取ることができます。
-
クラウドの匿名性階層: 新しい階層が追加されたことで、規模の小さいキャンペーンでも、アトリビューション情報/粗粒度のconversion valueを受け取ることができるようになります。これにより、SKAN 3で根強い問題となっていた、受け取るconversion valueが「null」になる可能性を最小限に抑えられます。クラウドの匿名性の1、2、3階層に割り当てられたインストールは、3つのポストバックをすべて受け取り(粒度の差あり)、階層0はポストバック1で最低限の情報のみを受け取ることを念頭に置いておきましょう。
-
ソース識別子: ソース識別子はSKAN 3では「キャンペーンID」と呼ばれ、2桁しかありませんでしたが、SKAN 4では最大4桁になり、名前が「ソースID」に変わりました。
-
lockWindow: この機能により、各ポストバック期間内で、lockWindowを適用してランダムなタイマーを開始するタイミングを決定し、ポストバックの待ち時間を短縮することができます。下の図では、2つ目の計測期間で5日目頃にロックがかけられ、7日目まで待つことなく、5つ目にランダムなタイマーが開始しています。ただし、同じ期間内のロックがかけられた後のデータは計測されません。
-
Webからアプリへのアトリビューション: Safariで表示される広告からApp Storeのプロダクトページへの誘導に対してアトリビュートすることが可能になりました。
SKAN 4はすでにリリース済みですが、業界全体での導入には時間がかかるため、2023年の後半に向けて、新機能を最大限活用するための戦略を構築・計画する時間はまだ十分にあります。当面は、粒度の粗いconversion valueをどのように割り当てるかと、LTVを予測し初期段階のインサイトを得るのに役立つ後段階のシグナルを得るために、CVをどのように利用するかについて考えることをおすすめします。
パート7
マーケティングの変化に対応するAdjustソリューション
Adjustは、iOS 14.5以降、そしてiOS 16.1.1以降の世界でクライアントのデータ主導の意思決定をサポートすることを目標に掲げています。Adjustが目指すのは、クライアントがSKANのマーケティング戦略とiOS全般への対応を総合的に理解し、自信を持って取り組めるようにサポートすることです。iOS 14.5以降のエコシステムにおいてAdjustが提供する3つのアプローチにより、クライアントとパートナーはエンドユーザーのプライバシーを守りつつ、強力なデバイスレベルのデータを引き続き活用できます。
2020年6月に新たなプライバシーポリシーが発表されて以降、Adjustでは、クライアントがiOSにおける計測の変化に対応できるように、影響を最小限に抑えるための取り組みを続けてきました。その一環として打ち出されたのが、以下3つの柱からなる計測フレームワークです。
- Convert:ユーザー同意を最大化
正確なデータを取得するには、第一に強力なオプトイン戦略が必要です。オプトインのベストプラクティスを基にユーザーの同意率を最大化し、アトリビューションへの影響を最小限に抑えるとともに、AppTrackingTransparency frameworkで以前と同じようにユーザーレベルのデータを受け取って競争上の優位性を確保しましょう。 - Collect:透明性のあるインサイトを収集
連携パートナーの幅広いネットワークを用いてSKANのデータを無料で収集することができ、このデータはConversion Hubによる柔軟で透明性の高いconversion valueマッピングによって補完されます。 - Compute:アクションにつながるデータポイントを算出
確定データと集計データの両方を活用したコンバーションモデルにより、データポイントを計算し、トラッキングに同意しなかったユーザーのデータとKPIのパフォーマンスを正確に予測できます。
ポストiOS 14.5のマーケティングを成功させる鍵となるのが、ユーザーの同意率を最大限に高めるための戦略を立てることです。これにより、アトリビューションへの影響を最小限に抑えると同時に、長期戦略の構築と予算の割り当てがしやすくなります。同意したユーザーのデータがあれば、今までどおり自信を持ってマーケティングの意思決定ができます。また、同意するユーザーが多いほど良いのはもちろん、オプトイン率が比較的低い場合でも成功への手がかりとなり得ます。Adjustが強力なオプトイン戦略の重要性を強調するのはこのためです。収集可能なデータポイントは、同意しなかったユーザーのパフォーマンス結果を計測する上で欠かせません。
予測に使用されるモデルの機能と精度は、そのモデルに与えるデータと同等です。匿名化された少ない集計データポイントしかモデルに与えない場合、定義されたユーザーレベルのデータを与えた場合よりもモデルの精度は本質的に下がります。
SKAN 4の新機能に完全に対応するため、アプリのSDKを最新バージョン(SDK 4.33.0、アップデートはこちら)に更新してください。透明性を重要視する考え方に基づき、Adjust SDKは常にオープンソースSDKとして公開されています。
パート8
Adjustソリューション:Conversion HubとSKAN 4、そしてその先へ
このガイドで大きく取り上げてきたように、iOSのマーケティングを成功させるには、SKANを最大限活用したconversion value戦略が不可欠です。こうした背景を踏まえ、Adjustは2022年9月に、スマートで使いやすいconversion valueソリューション「Conversion Hub」をリリースしました。機械学習を用いたこのソリューションにより、マーケターはアプリに適切なconversion value設定をマッピングし、変更できるようになります。Conversion Hubは、ビジネスの規模に関わらず、マーケターがSKANをインハウスで管理するためのソリューションです。随時アップデートが導入されており、現在は粗粒度のconversion valueとlockWindowの効果を最大化するための取り組みが進んでいます。Adjustは今後も広告主やパートナーと緊密に連携し、業界のニーズを反映した次世代ソリューションを市場に提供するという自社のミッションに基づいた堅牢な機能を提供していきます。
Conversion Hubには2つのconversion valueモードがあり、粒度の細かいconversion valueのモデリングとマッピングをできるだけ簡単かつ効果的に行えるよう設定されているため、今すぐこれを活用してSKANとiOSキャンペーンのパフォーマンスを向上させることができます。
1. Conversion Hub:粒度の細かいconversion valueモード:
- 63 CVsモード: それぞれの値に収益範囲をマッピングして、利用可能な63のconversion valueをすべて使用します。
- 6ビットモード: インストール後のユーザーエンゲージメントについて最大限の透明性をもたらし、ユーザージャーニーの最適化を支援します。最大6つのイベントが選択でき、利用可能な6つのビットにマッピングできます。
2. Conversion Hubの設定フロー:
スマート設定: アプリとそのカテゴリー、ビジネスモデルに最適なconversion valueモデルに関するアイデアや助言を必要としているマーケティングチーム向けの設定です。お客さまの収益化の取り組みやアプリカテゴリー特定の情報に基づき、Adjustの機械学習アルゴリズムがすぐに使えるconversion valueマッピングを生成します。
アドバンスト設定: すでに特定のconversion valueモデルを使用することを決めている経験豊富なチーム向けの設定です。アドバンスト設定フローで「63 Conversion Valuesモード」または「6ビットモード」を設定することで、最大限のカスタマイズ性と粒度が得られます。
まとめ
Appleの新しいプライバシーポリシーとiOS 14.5以降のリリースがもたらした変更点は、業界を大きく揺るがしてきましたが、ユーザー獲得やアトリビューションにおいては、多くの人が予想したほど深刻な影響を受けていません。業界リーダーとして、Adjustはこの動きを、iOSとApple、そしてエコシステム全体が進化し続けているサインとして捉えています。Adjustはパートナーとクライアントと緊密に連携し、今後も変化や新機能にいち早く対応していきます。
iOS 14.5以降のマーケティングとSKAdNetworkに対応するソリューションをクライアントに提供し、マーケターが自信を持ってデータ主導の意思決定ができるようサポートするというAdjustのアプローチと、ユーザープライバシーとデータの透明性に関する考え方は当初から変わりません。この理念は、エンドユーザーのプライバシーを守りつつ、強力なユーザーレベルのデータを引き続き活用していくことを重視しています。
Conversion Hubがすでに示しているように、今後、計測には機械学習によって得られた集計データが活用されるようになるでしょう。Adjustは、プライバシーがこの業界の根底にあることを理解しています。また、イノベーションが進歩するにつれて、ユーザープライバシーに関する仕様と技術的要件も同様に変化します。Adjust製品とソリューションの中核には「ユーザーと顧客の利益」があり、SKAN 4、iOS 16.1.1のリリースに際しても、そしてこの先もこの姿勢が変わることは決してありません。このガイドの内容を踏まえて、粒度の粗いconversion valueをどのように割り当てるかを計画し始めるとともに、AdjustのSKAN 4対応機能がさらに充実する2023年、LTVをどのように予測するかを検討しましょう。SKAN 4のマーケティングを成功させるための対策については、SKAN 4の4つのマイルストーンをご覧ください。
iOS 14.5以降の世界について詳しく知り、最新情報や新機能を確認したい場合、またはアプリやビジネスのニーズに合わせたアドバイスをご希望の場合は、無料デモにお申し込みください。Adjustのソリューションを実際にお試しいただけます。iOS 14.5+関連のすべてのガイドとその他の情報にアクセスするには、リソースセンターをご覧ください。
Adjustの最新情報をお届けします