ブログ マーケティングの核となる3つの心理的要因とその活用方法

マーケティングの核となる3つの心理的要因とその活用方法

心理学とマーケティングには非常に興味深い共通点があります。この二つの分野の分岐点で核となるのが「ヒューリスティック」です。ヒューリスティックとは、最小限の労力で迅速に意思決定を行うための心理的なショートカットのことを指し、意識されることなく自動的に行われています。無意識による判断基準は人間の認知プロセスの深いところに組み込まれており、ユーザー行動と意思決定を形作る上でも重要な役割を果たします。

アプリをインストールしたりエンゲージメントを高めたり、アプリ内購入をするなど、ユーザーがアプリをどのように操作するかという決定は、すべてこの思考の近道に影響を受けています。このように、マーケティングには心理学と切り離すことのできない点が非常に多く、その中でもマーケターが特に重視したい基礎となり得る概念が3つあります。その3つとは、心理学的原理である色彩心理学、社会的証明、希少性です。これらの原理を活用すると、モバイルアプリはより魅力を増して人々を惹きつけ、成功へと繋げることができます。

ニューロマーケティングとは

心理学的マーケティングとも呼ばれるニューロマーケティングとは、心理学的原理とマーケティング戦略を融合させたマーケティングアプローチです。マーケティングにおける心理学の概念には、単なる行動分析にとどまるのではなく、人々がなぜそのように考えて行動を起こすのかを解明するために、人間の認知に関する幅広いインサイトが取り入れられています。 つまりニューロマーケティングとは、何が消費者に行動を起こさせるのかを理解して、マーケティングに活用することです。


このアプローチにおいて大切なのは、脳の意思決定のメカニズムを理解することです。人間の行動は複雑ですが、マーケティング心理学の基本理解ができると、日々のマーケティング活動に取り入れていくことができます。同時に、エンドユーザーを尊重して倫理に則って保護するという面から、ここで学ぶ原理は道徳的に正しく活用することがとても大切です。

心理学的マーケティングとはニューロマーケティングの定義

色彩理論:マーケティングにおける色の心理学

色彩心理学とは

マーケティングにおける色彩心理学とは、消費者の行動や認識に影響を与えるために色を戦略的に使用するということです。色によって感情や心理、さらには行動的反応を体内から呼び起こす作用があるという概念に基づき、ブランディング(英語)広告の強力なツールとして活用することができます。

色は、資料やロゴ、製品、広告など、さまざまなマーケティングツールに使用され、ユーザーへ与える印象からユーザー行動に至るまで、あらゆる面で影響を及ぼします。色はその色をしている物や連想させる心情や情景を人に想起させます。例えば、緑は植物、黄色はバナナ、青は水、といったイメージができるでしょう。色が起こす感情にはどのようなものがあるのか、一般的に知られているものをご紹介します。

  • : 情熱、興奮、緊急、エネルギー、攻撃的、危険、愛、強さ
  • オレンジ: 熱意、創造性、温もり、楽しさ、若々しさ、親近感
  • 黄色: 幸せ、楽観的、警戒、明るさ、元気、快活
  • : 自然、成長、平穏、健康、新鮮さ、安定、富
  • : 信用、冷静、仕事、信頼、安らぎ、知性
  • : 贅沢、神秘的、精神、気品、洗練、野心

もちろん、白や黒ですらユーザーの認知に影響を与えることができます。

  • : 権力、上品、品格、洗練、力強さ、不思議
  • : 純粋、清潔、簡潔、無垢、淡白、平和
色彩心理学を用いたマーケティングのための色彩心理グラフ

マーケティングにおける色彩心理学の活用方法

すべての事柄に応用できるたった一つの色はなく、いろいろなアプリアイコンを見比べても、それぞれに異なる色が採用されています。下方に、さまざまなカテゴリーのアイコンを色で分けてグラフにしました。

グラフ内の青の列を見てみると、アメリカン・エキスプレスやJPモルガン・チェース銀行、Venmoなど、多くのフィンテックアプリに青が採用されており、信頼性を表現しているのが分かります。一方で、ビットコインのようなアプリには、色相環で青の反対色であるオレンジが使用されており、ユーザーの目を引きます。

ブランドが表現したい特性も、色を選ぶ上で要素となります。例えば、Eコマース分野を一つとっても、あるブランドのアプリは上品さと洗練さを重視する一方、別のブランドは活気や若さ、エネルギーに焦点を当てることもあります。

モバイルアプリのアイコンに見られる色彩心理学を活用したマーケティングのための色彩心理グラフ

これらは色彩が起こす心理として一般的な例であり、他にも文化やユーザー層によっても与える印象が異なることもあるため、マーケターが色を選ぶ際には、ターゲットとするユーザーをしっかりと思慮することが不可欠です。

社会的証明:マーケティングにおける社会的影響(ソーシャルインフルエンス)の心理学

社会的証明とは

社会的証明(ソーシャルプルーフ)は、消費者の意思決定に影響を与える多数派を活用する方法で、マーケティング戦略における「バンドワゴン効果」を生み出します。例えば、影響力があり鍵となるインフルエンサーを起用するなどがアプローチとして挙げられます。

他人の行動や意見に影響を受けやすいという人間の傾向を利用したのが社会的証明です。この心理をアプリをデザインしたり心理学に基づいたマーケティングを行う上で効果的に活用すると、インストール数を大幅に増やすことができます。

社会的証明の要素は容易に取り入れることができ、UX(ユーザーエクスペリエンス)(英語)を通してや、キャンペーンランディングページ(英語)にある「お客様の声」のようなマーケティング資料など、至るところに目立つようにユーザーレビュー(英語)を掲載するだけです。既存ユーザーからの高い評価や肯定的なレビューを紹介することで、潜在的なユーザーに対してアプリの価値や信頼性を瞬時に高めることができます。

実際のアプリによる例をいくつか見てみましょう。

モバイルアプリにおける社会的証明の例
  1. 睡眠改善アプリ 『ルーナ』 は、アプリのサブスクライバーが1ヶ月間無料お試しを5人まで紹介できるキャンペーンを導入しました。人は自分が知る人からの意見を信頼して影響を受ける傾向があるため、潜在的なユーザーに向けた社会的証明として効果のあるアプローチです。同時に、アプリを新たに使うユーザーにとっても、最初からサブスクリプションで購読を開始するのではなく、アプリの機能をまず自ら試すことができるため、非常に的確な方法です。
  2. ショッピングアプリ『New Look Fashion』 は、特定のアイテムにユーザーの注目を向けさせる「すべての閲覧を見る」という機能を採用しています。この機能は同じ商品をどれだけ多くのユーザーが閲覧しているのかを分かるようにしているため、ユーザーにとっての商品価値を高め、購買意欲を掻き立てることができます。この心理については追って詳しく説明します。
  3. ゲームアプリ『トラベルタウン』 は、人気セレブとして支持されているカイリー・ジェンナーを起用することで、インフルエンサーを活用した社会的証明を取り入れています。インフルエンサーを起用したキャンペーンが成功するには、ユーザーがインフルエンサーの持つカリスマ性とアプリを関連づけて「彼女が関わりがあるのなら信用できる良質のアプリだ」と考えることにあります。また、「彼女が話題にする他の商品を気に入っているから、自分はこれも気に入るだろう」と考えるユーザーもいます。
  4. フィットネスアプリ『Bend』 は200万人を超える既存ユーザーを抱え、サブスクリプションによる有料アクセスページを打ち出していますが、星4.5という評価の高さと満足度の高いユーザーの声をスライドで掲載することで社会的証明を取り入れています。これらの反響を活用し、「私たちのアプリは定期購読に見合うだけの価値があることが証明されています」というメッセージ性を明確に表しています。

希少性:マーケティングにおける限られたリソース(資源)という心理

希少性マーケティングとは

希少性マーケティングは、「資源やそれからつくられる財やサービスの供給源(リソース)が、人間の欲望に対して相対的に希少である」という経済における希少性の原理を活用して、緊張感を感じさせて製品やサービスの需要を高めるものです。このアプローチの活用方法には、例えば限定品や特別割引などを提供することによって、消費者の中で商品価値を高めたり、製品に値打ちがあるという感情を生み出すことができます。

希少性は「取り残されることへの恐れ(FOMO)」に働き掛け、今日のデジタル時代においてさまざまな物事における力強い動機となっています。この原理をマーケティングに取り入れる最も一般的なアプローチ方法は、アプリ限定の割引や特別機能の利用を期間限定で提供することです。時間制限があるという緊張感を持たせることで、有効期限が切れてしまう前に急いで行動を起こすようにユーザーを促します。他にも数量限定オファーを取り入れるなどの方法もあります。

希少性を暗示するキャッチコピーには、「期間限定」、「限定アクセス」、「限定版」などがあります。カウントダウンタイマーや商品の在庫状況などを視覚的に表示することも商品の希少性を感じさせて、ユーザーに早急な意思決定を促すことができます。

実際のアプリによる例は以下のとおりです。

モバイルアプリに見られる心理学的マーケティングの希少性の例
  1. ショッピングアプリ『Etsy』 は、ユーザーが欲しいものや気に入ったものを保存したウィッシュリストにある商品が、ある一定の数量以下の在庫数になると、Eメールマーケティング(英語)によりマーケティングに関する案内の配信に同意したユーザーに対して在庫僅少の通知を送信します。商品が残りわずかであることを知らせるだけでなく、同じ商品をカートに入れている他のユーザーの人数も分かるため、その場で商品購入に対する緊迫感を感じさせ、最後の1点を勝ち取る達成感を味わうためのモチベーションをユーザーに促します。
  2. 言語学習アプリ『Duolingo』 は、「パワーチェスト」という、ステージをクリアするごとにミニゲームなどのご褒美の特典を用意して、ユーザージャーニー全体を通して期間限定のオファーを導入しています。特典が消えてしまうことを知らせるカウントダウンタイマーがユーザーに行動を促します。
  3. 旅行アプリ『Airbnb』 は、宿泊先リストの中でも特に人気があるものに「なかなか予約が取れない人気の宿泊先」というメッセージを表示しています。メッセージには、その宿泊先が通常は予約されていて満室であることが記載されているため、検索している日付で予約ができなってしまう前に急いで行動を起こさせるようにユーザーを促します。
  4. ゲームアプリ『猫とスープ』 では、「ゲーム画面下に限定ミニゲームにアクセスできる期間(17日間)のカウントダウンタイマーを表示する」、「1日に5枚の広告スキップチケットの提供する」、「1日に5回まで無料でプレイできるようにする」といった、3つの方法で希少性が活用されています。

心理学的マーケティングにおける倫理を尊重する

心理学を活用することは、道徳的なガイドラインに沿って推し進めることが非常に大切です。マーケティングの背景にある心理を探求する上での最終的な目標は、消費者を操作することではなく、影響を与えることです。そのためには、オープンなマーケティングアプローチを取り、同時にアプリが広告の効果を発揮できるようにしなくてはなりません。これは、消費者との永続的な信頼関係を構築するために必要不可欠です。

モラルを守るために、次のことは避けましょう。

  • 存在しない希少性の促進: 商品が5つ以上残っている時に、アプリのユーザーに「5つしか残っていない」などの嘘の情報を伝えない。
  • ユーザーレビューの誇張: 星評価の平均を表示する際に、肯定的なレビューのみによる平均値を出さない。
  • お客様の声の捏造: アプリをリリースした初期の段階では、メリットになるユーザーの声を集めることはもちろん容易ではありませんが、虚偽によるプロフィールの作成や肯定的なレビューを書くといったようなことは決してしてはいけません。本物の評価を獲得するために、ユーザージャーニー全体を通してレビューへの記入を促すことに注力しましょう。

マーケティングに心理学の原理を取り入れることがビジネスの成功に繋がることは明らかです。しかしながら、真の魔法とは、心理の操作ではなく、これらのインサイトを倫理的かつ責任を持って適用させ、影響力に焦点を当てて信憑性と信頼を築くことにあります。また、あるアプリで成功したことが別のアプリで必ずしも成功するとは限らない、ということを念頭に置いておかなければなりません。このプロセスで欠かせないのがABテスト(英語)です。心理学的戦略に調整を加えるのに役立ち、特定のユーザーの心に最も響くのが何かを見つけ出すことを可能にします。
色の使い方や社会的証明の組み立て、希少性を用いた戦略など、さまざまな要素を試すことで、アプリにとって最も効果的なアプローチを見つけることができます。それによって、打ち立てた戦略が実際のユーザーの嗜好に基づいていることを確かにするだけでなく、カスタマイズ(英語)やユーザーエクスペリエンスをよりよく、より効果的に作り上げることができるのです。

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